scene.1 運命ヘ反逆セヨ


窓の外から見た限りでは、目的の場所にはもう入っていた。取り敢えずどこかで停車して降りなければ。


ビッキー
「この先の封鎖区画の駅で下車する。そこから最深部に侵入出来るからな」

ファマス
「そうか。……ここにいる人達は?どうすんだ?」

ビッキー
「ここに乗っている人達は不当な理由で追放処分になった人達が多い。……出来る事なら騎兵隊に引き渡して、安全に解放したい」

ファマス
「……わかった。そこはお前の好きにしろ」

ビッキー
「そうさせてもらう」


俺は運転席に座った。
ファマスは銃を扉に向けて待機する。
本で読んだくらいの知識しかないが、運転に関して問題はなかった。というか結構簡単だった。


暫く進んだ所で、封鎖区画に出た。
全域封鎖となっている貨物線の通り道……もとい、追放者を送る場所。
"封鎖区画ハングドエッジ"。

ビッキー
「よし。後数メートルで駅だ。上手い事止めてあそこで降りる」

ファマス
「了解」


俺はゆっくり数メートル進めて停止させ、ファマスと共に降りる準備をした。


……のだが。

2人で外に出ようと運転席を抜けると、ドォン!!という音と共に天井が壊れて、白くて丸い巨大回転刃が見えた。

……どうやら敵襲らしいな。

ビッキー
「来たぞファマス」

ファマス
「ええっ!!?いきなりかよっ!!」

俺は壊れた天井から上に上がった。


そこにいたのはさっきの巨大刃が2本の腕になっているサソリ型の兵器だった。

ビッキー
「コイツは……政府の新兵器か。神話の兵器を再現したとか言ってたが……」

嫌な顔を思い出す。
アイツが作らせた機械……その事実だけで寒気がしてくる。

こんな、人を殺すために作られた見た目をした兵器なんて……!


ビッキー
「……鉄屑にしてやるよ」

 

俺は剣を構える。


ファマス
「おいビッキー、置いてくな」

ファマスがよじよじと登ってきた。


ビッキー
「お前が遅いのが悪い」

ファマス
「なっ……お前なぁ……」

ビッキー
「文句があるなら後で聞いてやる。来るぞ」

ファマス
「えっ……おわっ!!」

刃が俺とファマスの間に落ちてきた。
兵器の右腕の方の刃だ。
兵器が左腕の刃を俺達に向けている。

俺は右腕が引っ込む前に飛び乗り、駆け上がった。

 

ファマス
「おおっ!!流石に軍人様は違うねぇ……」


ファマスは銃を構えながら呑気にそんな事を言っている。俺は機械の肩まで到達した所で剣を兵器の肩に突き立てる。当然刺さらないが、兵器は肩にいる俺に刃を向けてくる。

 

ビッキー
「ファマス!!眼を狙え!」

ファマス
「おう……って、お前は大丈夫なのか!?」

ビッキー
「良いからやれ、早く」


ファマス
「ああもう!」

ファマスは銃の引き金を引き、兵器の眼の部分に見事に命中させる。俺は刃を剣でしっかり弾き返し、腕から降りた。

兵器は少し動きを鈍らせる。
予備はあるだろうが、昨今の兵器は「目」と呼べる部分にカメラが付いていることが多く、目を破壊できればこちらを認識出来なくなるのだ。

まぁ、今回は破壊にまでは至らなかったようで、すぐに持ち直したようだが。


ビッキー
「……流石に硬いな。並大抵の武器では太刀打ちできないか」

ファマス
「そりゃ兵器だからな。下手な攻撃は通用しないぜ」

ビッキー
「……面倒くさい」


さっさと終わらせよう。
ここにいる人に被害が及ぶのは良くない。


ビッキー
「……異能力」

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俺の感情をエネルギーに変える……!
そしてエネルギーの結晶を作り出し、兵器に向けて投げつける。

このエネルギーの結晶は感情の起伏によって威力を増したり、特性を変えたりする。
今作った結晶は怒りの感情が強い。奴が作ったkun帝国製の兵器を相手にして、イライラしていたからだ。そして怒りの結晶は、かなりの高温で電気を帯びており、機械をショートさせる事も出来る。

ビッキー
「喰らえ!!」

怒りの結晶は兵器の肩に当たり、バチバチと電流を流す。兵器は凄い音を立てて悶えるようなそぶりを見せる。


ビッキー
「……流石に効いたか」

俺は列車の屋根に着地した。

ファマス
「すげえな、お前の異能力はよ」

ビッキー
「まぁな。だがそれでもまだ倒しきれてないな、これは」

ファマス
「……なんちゅうか、ショートしても動き続けるってのは怖えな。ゾンビみてえだな」

部品が弾け飛び、至る所から発火している兵器を見ながらファマスが言った。


ビッキー
「ああ。まぁそれはともかく、コイツにさっさとトドメを刺さないとな。ファマス、異能力で壁を作ってくれ、爆発でもしたら一般人が下に落ちる可能性も出てくる。下は湖だから助かる可能性は低い」

ファマス
「……まぁ確かに俺の異能力は足場を作ったり出来るから、壁くらい作れるが……まぁいいや。わかったよ」

ビッキー
「ああ。頼んだぞ」

 


───そう。この場所、ハングドエッジは下が湖になっている。逃げられないような仕組みにするために、湖の上に作ったと帝国の兵士から聞いた。……中々に性格が悪い。

しかも湖からかなり高い位置に作られているため、線路は脱線必至なくらいに細い橋脚の上にあるし、殆ど逃げる道がない。
だが、流石に兵士の引き継ぎや見回りの為に足場を作る必要があったらしく、それらを作った結果、今のハングドエッジが完成したのだ。

ビッキー
「行くぞ!!」

ファマス
「おう」


ファマスが異能力で壁を作る。その壁は一瞬で形成され、俺が兵器の前に立ちはだかる頃にはそびえ立つ壁が後ろに出来ていた。


ビッキー
「いくぞ……異能力"悪鬼羅刹"!!」

ビッキー
「"残影響刃"!!!」

俺は青白い不気味なオーラを発生させ、兵器のノコギリと同じ形の物を作り出した。そして、兵器に向かって投げる。

ノコギリはウィンウィンと音を立てながら兵器に刺さり、嫌な音を撒き散らしながら兵器のボディを内側に向かって斬り進み、あっちから出てこっちから戻るといった起動を繰り返しながら、兵器をめちゃくちゃに切り刻んだ。

兵器は叫び声のようなキリキリ音を立てて、爆発した。俺は即座にファマスが作った壁を登り、ファマスの所へ行って爆発を回避した。

ファマス
「……マジで爆発したし」

ビッキー
「足場も少し崩れたが、頑丈だな。あまり被害は無さそうだ」


ビッキー
「取り敢えず、兵器ももうショートしたし、駅には到達してたみたいだから、出口だけ作って降りよう」

ファマス
「OK」


俺達は列車に人が通れるだけの穴を開け、駅に降りた。

ファマス
「さてビッキー、この駅はどこに繋がってるんだろうか」

ビッキー
「ふむ……見回した所、上階まで道が続いているというわけでは無さそうだ。となると何処かにリフトのような物が……」

俺は駅の周りを見回し、通路などを探してみた。すると、巨大な正方形のリフトに繋がる長い通路を西側に見つけた。

ビッキー
「……あったぞ」

ファマス
「……おお、本当だ」

 

俺達は駅を降りて、リフトに繋がっているであろう通路を進み始める。
周りを見渡すと、小型サイズの飛行艇と呼ばれる空を飛ぶ船や、電子モーターを使って作られた羽を付けて飛行する兵士が見える。


ビッキー
「この調子だと、爆撃はすぐ飛んできそうだな」

ファマス
「そうだな。実際一般兵が向こうで見張りやってるし」

ビッキー
「なっ……お前、そういう事は早く言え!」

前方を見ると、確かに一般兵が5、6人見張りをやっているのが見える。……列車の奴らと同じでヘラヘラしている……。
どうやら、奴らはそういう兵隊のようだ。

 

ビッキー
「行くぞ、ファマス」

ファマス
「ああ。……なるべく急いでやるぞー」

 

戦闘に関しては特に言うことはない。
兵士の銃などに当たる理由はない。ただ斬るだけだ。それだけで簡単に倒せる。

俺達は敵兵を倒した後、リフトの近くまでやってきた。


ビッキー
「着いたな。リフトはあれだ」

ファマス
「よし。乗るか……」

 

 

と思ったのも束の間。

 

リフトが兵器による攻撃で爆発した。


ビッキー
「……えっ」

ファマス
「……おい、マジかよ」


後に残ったのは残骸と、俺達。
そして残された追放処分となった一般人のみ。


……さて、どうしようかな。

 

 

to be continued…

 

 

 

プロローグ  時を駆ける閃光

 

何億年も昔、2人の神が世界を作った。

約4万年前────────────
至高神との戦いに人類は勝利した。

1万8000年前───────────
2人の王の激突が、新たな時代の扉を開き、
怪物の時代が終わりを告げた。


神話が終わり、神武天皇即位紀元
すなわち人類史が始まったのは、
1万6000年前の、ほんのつい最近の話だ。

そこから更に時が流れ、1975年に初めて異能力者が観測され、その後第2次世界大戦を越え人々が戦いを忘れつつあった2023年、人々は恐怖に包まれる事となる。
突如、空に大陸が現れ、怪物が復活し、新たな脅威が世界に跋扈するようになった。

能力を持たない者たちと、異能力者、浮かぶ大陸の者達は団結し、新たな脅威に対抗する事を決めた。

 

それから、26年の時が過ぎた…。

 


〜浮遊大陸 kun帝国 追放列車1号車〜


─────────静かだ。
車内からは、外の音は聞こえない。そのためか特定の人間の、耳障りな談笑が聞こえてくるのみで、かなり静かだ。

 

今、どこを移動しているのだろう。
俺の乗っている列車は窓が閉じられていて、外は見えないから、何処を移動しているのかもわからない。今の状況で一つわかるのはこの列車を降りたら、俺はもう帰れないのだという事くらいだ。そう思って乗り込んだのでどうでもいいのだがな。


今は巡回の兵士が2人、何やら談笑しながら俺と乗客達を見張っている。……この列車に乗っているのは追放される者達。故に帝国の兵士が複数人乗り込み、俺達を監視しているわけだ。


しかし、ああやって気の緩んでいる馬鹿どもを見ていると滑稽で仕方がない。つい口元が緩んでしまう。


「おい、そこのお前!何を笑っている」

兵士はめざとくそれを見つけて俺に言った。


「……kun帝国の兵士があまりにも滑稽でつい笑ってしまったよ。悪かったな」

「なんだと!?」

「何を勝ち誇っているのか知らないが……お前達はまだ何も得ていないんだ。お前達が持っているのはこの浮遊大陸のみ。……つまりはお前達は井の中の蛙だ。大海を、下の国を知らないお前達は見ていて滑稽だぞ?」

「……貴様……殺してやる!!」


兵士が銃を構えた。

「……やれやれ、だ」

俺は素早い動きで右脚を振り、兵士の顎を蹴り上げた。兵士は鼻血を噴出しながら上の天井に鈍い音を立てて突き刺さった。腕はだらんとして銃を落としたが、指が動いている所を見ると気絶しただけのようだ。俺はその兵士の銃を拝借し、中の銃弾を抜き取った後、自分の座っていた席の後ろの窓を開けて、外へ投げ捨てた。

もう1人の兵士がこっちに向かって走り始める。ここまで25秒もあって近付いてこないとは、本当に愚かだな。


「無駄だ。銃が異能者に通じるかッ!!」

俺はそう言って、左手に持った銃弾を一つ右手に持ち替えて、強く握る。すると銃弾の周りを青い光が包み、手を開くと同時に自動的にもう1人の腹に直撃して貫通した。銃弾は後ろの扉に当たり、ポトっと落ちた。もう1人の兵士は腹と頭を抱えながらうずくまった。


「な……なんだこれ……変な物が痛みと共に体に流れ込んでくる……この嫌悪感は……これは、"感情"なのか……まさかッ!!そんなッ!!」

「……感情は大きなエネルギーを生み出す。それは全てを貫く弾丸にも、あらゆる物を破壊する爆弾にもなりうる究極の力。俺はお前に"嘲笑
"の感情で攻撃した。お前の頭の中を破壊するのにはちょうど良いと思ってな」

「き……貴様……帝国に刃向かうと、どうなるのか……わかって……い る の か」

兵士はそのまま気絶した。

 

乗客がざわめきだし、俺に視線を向けた所で、銃声が耳に入ってくる。前の車両───2号車───で戦闘が発生しているようだ。恐らく俺の仲間だろう。

俺はもう1人の兵士のズボンのポケットからカードキーを取り出して奥の扉へ行き、扉の横のセンサーにカードをかざし、奥の扉を開いた。


「……おい、ビッキー。合図忘れてるぞ」

「悪かったな。あまりにも滑稽で我慢出来なかった」

「一月前まではお前もあいつらの仲間だったってえのに……まったくよ」

「そうだったな。……だがまぁ、ああまで滑稽な振る舞いをしていたわけではないと言っておく」

「そうかい。だったらあれだな、今まで頑張ってたのがバカらしくなってくるな」

「そうだな」


そうやって話をしていると、前の車両から何人もの兵士がやってくる。

「……おいビッキー、剣」

ファマスが剣を渡してきた。俺の持っていた剣銃、"ブレイズエッジ"。剣の鞘の下に銃がくっついている、現時代を象徴する武器。


「……ああ、ありがとう。……じゃあ行こうか」

「よし。……さぁ、暴れるぞ!!」


俺達は次の電車へ、扉を通って乗り移る。
そして兵士を斬って撃ち抜いて薙ぎ倒し、どんどん奥へと進んでいく。

何人いようが関係ない。
俺達は、もう止まらないんだ。


電動車の一つ前の車両まで来た。
ファマスが運転席へ走っていったのを確認し、俺は現在地を確認するために、車両の窓を
開けた──────────


────────瞬間、脳裏に浮かぶ"映像"。

 

「……?」


何かと重なる。
しかし、それが何かわからない。

わかる事は、見えた映像に、確かに─────俺と同じ、桃髪の人間が写っていた事だ。

 

一抹の不安を抱きながら、
俺は列車に揺られ、窓から外の景色を眺める。


なんだろうと関係ない。
俺は、俺の大切なものを取り返すだけだ。

 

 


Historia Repetit FINAL FANTASY XIII  開幕

 

 

後書き

こちらのブログはHRFF13専用のブログとなります。定期的に投稿していきますのでよろしくお願いします。HRFF13はpixivで最新話まで閲覧可能ですので待ちきれない人は、どうぞ。